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相続税に詳しい税理士は少ない

2017.05.20

大ちゃん先生こと、高橋 大貴です。

相続税という税金があります。多くの方が、相続税は「税金のひとつ」のなのだから、「税理士」であれば相続税も詳しいだろうと誤解をしています。しかし、相続税に詳しい税理士は数少ないのが現実です。

例えば、お医者さんで考えてみましょう。医師は外科・内科・眼科・整形外科など、専門が様々に分かれています。昔から診てもらっているかかりつけの内科の先生がいたとしても、目が痛いときは眼科に行くべきでしょうし、骨折なら整形外科に行くべきです。

税理士も同じことが言えます。会社でお世話になっている顧問税理士、確定申告を昔からしてもらっている税理士事務所、今までのお付き合いやご縁はさまざまでしょう。しかし、その税理士が「相続税に詳しいかどうか」は、また別問題なのです。

 

【 相続税の申告の件数 】

平成2812月に国税庁から発表された統計によると、平成27年中に亡くなられた方(被相続人数)は約129万人(平成26年約127万人から微増)。このうち相続税の課税対象となった被相続人数は、約103千人とのことです。平成26年は約56千人でしたので、平成2711日からの相続税の増税(基礎控除の4割減)により、相続税がかかった方は約2倍に増えたことになります。

これに対し、日本税理士会連合会の発表によると、税理士登録数(平成293月末日現在)は全国で76,493人。平成26年までは相続税がかかった人の数よりも、税理士の数の方が多いという状況でした。これが増税により平成27年では逆転したことになりますが、だからといって税理士一人一人にまんべんなく依頼が分散することはないでしょう。現実的には、相続に詳しい税理士に申告依頼が何十件・何百件と集中しますし、またあまりおすすめはしませんが税理士に依頼せず相続人が自分で申告することもありえます。ですので、統計からみても「1年に1回も相続税申告をしない税理士がたくさんいる」ということは、明らかな事実です。

 

【 これまでに見た「ひどい」相続税申告書 】

私がセミナーで、このような話しをすると、多くの方が「知らなかった」とおっしゃられます。「何年か前に相続税申告をしたが、ちょっと中身を見てほしい」というお話しもよくあるのですが、その中でもこれまでに見た「ひどい例」をいくつかあげます。

二次相続税をまったく考慮せず、すべて妻が相続する申告書:

配偶者がすべて相続するというケースは世の中に大変多くみられます。配偶者の場合は、遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が、1億6千万円もしくは配偶者の法定相続分相当額までであれば、相続税はかかりません。これを「配偶者の相続税額の税額控除」といいますが、この制度を安易に利用しているケースが多いのです。

恐いのは「二次相続税」です。例えばお父さんが亡くなった場合に、お母さんがすべて財産を相続し、上記の制度を利用して相続税がゼロになったとします。しかし、状況によってはお母さんが亡くなった時の相続税(二次相続税)が大幅に上がってしまい、大変なことになるというケースが多々あります。お母さんが亡くなった時には、もう「配偶者の相続税の税額控除」は使うことができないためです。

相続税は連綿と続く可能性のあるものです。目の前の税金がたとえゼロになるとしても、後々の税金が逆に上がってしまうようでは目も当てられません。二次相続税まできちんと考えてアドバイスをくれる税理士に依頼をしましょう。

土地の評価がすべて「教科書通り」の申告書:

路線価に面積をかけただけ、もしくは固定資産税評価額に倍率をかけただけ。間口・不整形地・広大地など一切の考慮をしてない。農地・山林に関しても造成費ほか全て未記入、すべて勾配のない長方形の更地として計算・・・など、税理士が土地を「単純計算」している申告書を目にします。

不動産は一つとして同じものはありませんので、必ず現地に行きます。目で見て・耳で音を聞いて・鼻でにおいをかいで・周辺状況を確認し・面積や勾配を確認する、などの調査をする必要があります。「評価を下げるべき事象はないか」と探すのが、相続に詳しい税理士の大切な業務なのです。

 

小規模宅地の特例が明らかに使えるのに、使っていない申告書:

これも先日びっくりした例です。小規模宅地の特例が使えるのに、使っていない申告書を見ました。小規模宅地の特例をごくごく簡単に説明すると、亡くなった方の自宅の敷地や、営んでいた店舗や工場の敷地、もしくは営んでいた賃貸マンションの敷地などを相続する場合に、一定の条件を満たせば、相続税上の評価を割引くことができ、その結果 相続税を下がるという制度です。

小規模宅地の特例は、とても相続税を下げる効果が高く、私たちの開催している相続セミナーでも重要な講義項目の一つです。それを、税の専門家である税理士が知らないということがあるのかと、大変驚いたことを覚えています。

 

【相続税は自己申告・自己責任】

相続税は、お亡くなりになった後、勝手に「いくら払ってください」という書類が税務署から届く税金ではありません。亡くなった方の財産を、こちら側が評価して、「税金はこの金額と存じます」と税務署に提出する「自己申告」の税金です。

そして、残念ながら、その財産を高額に評価してしまっても、税務署は教えてくれません。また、使える特例や制度を使わずに申告したとしても、「あなたはこの特例をつかったら相続税が安くなりますよ」というお知らせが税務署から届くことはありません。相続税の知識があるもないも、それは「自己責任」なのです。

相続税の申告は、一生のうちに何度も経験することのない特別なイベントです。例えば、仮にあなたが「一生に一度の心臓の手術」をするとしたら、「心臓の手術を1年に1回するかしないか」のお医者さんに手術を頼みますか?

相続税は、相続税の専門家である「相続に詳しい税理士」に依頼されることをおすすめします。必要であれば、相続サポートセンターより、「相続に詳しい税理士」をご紹介いたしますので、いつでもご連絡ください。

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筆者紹介

高橋 大貴
福岡相続サポートセンター
相続コーディネーター

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